「PCR検査抑制は日本の恥」と痛烈に批判 山梨大・島田真路学長に聞く

私が最初から言ってきたことだ。押谷・西浦、あの世で犠牲者に詫びよ。 

 

新型コロナウイルスの感染拡大防止策や治療をめぐって、山梨大病院(山梨県中央市)の活躍が目立っている。元病院長でもある島田真路学長(皮膚科学)は国立大の学長でありながら、国のPCR検査抑制方針を「日本の恥」と痛烈に批判し、「クラスター(感染者集団)対策より、検査の拡充で感染者を見つけ、隔離を徹底すべきだ」と主張している。その理由を聞いた。(渡辺浩)


 ■検査率は途上国並み

 --なぜPCR検査の拡充を主張するのか

 「現在、新型コロナを診断する唯一の方法がPCR検査だ。やらないと風邪と区別がつかない。だが、政府の専門家会議東京五輪開催のためか、当初から検査の積極的活用に否定的だった。だから厚生労働省は検査を事実上厳しく制限してきた。検査より、クラスター対策など感染経路の調査を重視してきた。その後、軌道修正したように見えるが、やはり抑制的だ」

 --PCR検査は外国と比べてどのくらい少ないのか

 「他の先進国は日本の何倍、何十倍とやっている。そして陽性者を隔離するというやり方だ。陽性者の数や死亡割合が近い国を人口比率で比較したら、日本はパキスタンやアルゼンチンと同じくらいだった。医療体制の劣っている途上国並みということだ」

 ■見過ごされる感染

 --世界は日本をどう見ているか

 「在日米大使館が4月3日、日本に滞在中の米国人に対し、無期限にとどまるつもりがなければ直ちに帰国の準備をすべきだと呼びかけたとき、多くの日本人は『感染が広がっている米国が何を言っているのか』と思ったが、検査せず、感染者が多数隠れているかもしれない国から退避させるのは当然だ。私は検査の少なさは『日本の恥』だと思う」

 --検査を増やすと医療崩壊が起きるといわれてきた

 「軽症者の宿泊施設での療養が始まったが、前からやっておけばよかった。感染症法上、新型コロナ感染者は入院させなければならないというのは当時も今も変わらないのだから、初めから法律を拡大解釈してそうすればよかった」

 --国の検査抑制方針をどう思うか

 「専門家会議は『日本は何とか踏みとどまっている』と言っているが、検査を抑えたため感染者が見過ごされているのに、なぜ踏みとどまっていると分かるのか。憤りを感じる。どこに感染者がいるか分からなくなってしまった。クラスター追跡も大事かもしれないが、今はクラスターとの関連が見えない『孤発例』をどんどん見つけるほうがいい」

 ■土日に減る不思議

 --PCR検査体制の問題点は

 「国がPCR検査を都道府県や政令指定都市の衛生研究所にほぼ独占的にやらせてきたことがいけない。東京都の1日の感染者数が報道されるとき、『土日は検査数が少ないので』と当たり前のように解説されるが、感染症対策に土日は関係ない」

 --山梨大病院で8日からドライブスルー方式検査を始めるのはなぜか

 「私どもは1月下旬から独自のPCR検査体制の構築を始めた。その結果、新型コロナによる髄膜炎患者や0歳児の感染を見つけることができた。今回、山梨県長崎幸太郎知事からの要請で県内のPCR検査数増加に協力することになった」

 --検査数をもっと増やすにはどうすればいいのか

 「全国の大学病院が奮起するよう呼びかけたい。東京都医師会がPCRセンターを各地に作って検体を採取し、民間の検査機関に検査してもらうそうだが、そのような方式もどんどん取り入れていくべきだ」