田口文広氏の提言。新型コロナウイルスは最初から未知でも何でもなかった。

山中伸弥先生のサイトに早くから掲載されていた、田口文広氏の提言。

当時、未知のウイルスとか喧伝されていたが、これを読むと新型コロナウイルスの特徴と対策法が、獣医師間では既知のことと知られていたことがわかる。いくらWHOで感染症対策に功績があったとしてもあるいはインフルエンザウイルスの感染防止に功績があったとしても、専門家会議はコロナウイルスの特質は全くわかっていない馬鹿の集まりだった。私は、まさに専門バカ会議と読んでいた。田口氏の提言の全文を掲載する。 

COVID-19 対策に関して
コロナウイルス研究に長く携わった元研究者のコメントである。
現在、猛威を振るっているヒトコロナウイルスによる COVID-19 対策として、日本は韓国やドイツなどと違い、感染者特定重視の方針をとってはおらず、症状が出た患者の感染有無を判定することに重点を置いている。従って、遺伝子検査数は未だに多くない。COVID-19では多くの不顕性感染者が存在し、それらが感染源となっていることは、本疾病が日本侵入当初から、指摘されていることである。感染者特定を重視しない日本では、感染者数が他国と比べ極めて少なく、また致死率は2%と、韓国、ドイツなどと比較して高い。このことは、多くの不顕性感染者(感染源)が潜在することを意味する。
コロナウイルス感染症はその制御が極めて難しい。例えば、豚コロナウイルスによる流行性下痢(PED)は、それまで全く感染の無かった北米に 2013 年 4 月侵入し、急速に米国、北米各所に拡がり、約 1 年半で数百万頭の新生豚や子豚が死亡し、その数は米国全豚数の 1/10 とも言われた。感染豚の隔離は厳格に行われたが、汚染した豚運送車、豚取り扱い者の汚染衣服などにより、厳重なバイオセキュリティを通り抜け、感染拡大し続けた。

PED はCOVID-19 と同様、年齢を問わず感染するが、致死的な状態に陥るのは、感染に対して抵抗力の低い新生子豚であり、新生子豚が COVID-19 での高齢者、基礎疾患保有者に相当する。米国 PED はより厳格なバイオセキュリティの構築により大きな流行は抑えられたが、現在でも散発的に発生している。
一方、マウスコロナウイルスはマウス動物実験に様々な影響を及ぼし、実験動物マウスでは排除すべき第一の病原体である。感染力が極めて高く、実験室内一匹のマウスに感染が認められると、瞬く間に同飼育室内の全てのマウスに感染する。その対処に誤ると、他の飼育室、或いは実験動物施設全体に感染が拡大し、全てのマウスを殺処分しなければ、再現性のある動物実験はできない。また、感染により抗体が陽性になっても、マウスの抵抗力の低下(例えば、免疫抑制剤の投与や妊娠)により、感染性のウイルスが排泄される。即ち、一度感染すると、終生ウイルスを持ち続ける持続感染に陥る。
この様なコロナウイルス特有の感染様式(強い感染性、不顕性感染、持続感染の可能性)を理解すれば、COVID-19 感染拡大を制御する第一の手段はワクチンだが、現段階では、まだワクチンはない。この状況で、感染拡大を少しでも抑えることができるのは、感染者の特定と隔離である。COVID-19 は上記動物コロナウイルスと同程度の感染力があると推測され、感染者隔離以外に感染拡大を阻止することはできないと考えられる。

不顕性感染者がいることは、その人たちが触れた全ての物、例えば、電車内の吊り輪、手すり、スーパーマーケットの商品の包装などが汚染している可能性があり、これらを通して感染拡大することは、上の PED のケースと同様である。
COVID-19 専門家委員会でこのコロナウイルス特有の感染について議論されなかったであろうか? ワクチンのあるインフルエンザとは、対応が全く異なって然るべきである。
各国が必要以上と思われるくらいの厳重対策をとっているのは、このようなコロナウイルス特有の感染様式を理解した結果ではないかと考える。
COVID-19 での犠牲者は殆どの場合、高齢者や基礎疾患を持つ人である。若い健常者は無症状、軽症化で終わることが多いが、そのような無症状(不顕性)感染者を隔離することがなければ、COVID-19 は限りなく続くように思われる。感染者が存在するかぎり、非常事態終了宣言はなく、有効なワクチンができるまで、限りなく続く。また、ワクチンが全能ではなく、変異株が出現し、大きな問題となることは、PED や鶏コロナウイルスでは良く知られている。
現時点で早急になすべきことは、感染者の特定、隔離である。無症状者や軽症患者は他国で実施されているように、医師の監督下で特定の宿泊施設に収容し、重症患者は指定病院での治療である。国や東京都が打ち出している「外出自粛」では、強制力がなく、感染拡大の阻止は殆ど不可能と思う。
私が強調したいのは、COVID-19 の感染拡大を抑えるには、感染者の特定、隔離が最も有効で、現段階では唯一の手段である、ということである。都市のロックダウンはかなり長期間(少なくとも潜伏期間以上)行わないと感染防止効果はない。
現在、東京都内は、人が集う場所はどこでも感染し得る状態で、基礎疾患を持つ高齢者が安心して過ごすことは出来ない。

田口文広: 獣医師、元大学教授、元感染症研究所室長、コロナウイルス研究歴 45 年