転載 また緊急事態…「ゼロ・コロナ戦略」を取らなかった日本政府の「根本的な大失敗」

臨床疫学の専門家(医学博士)の群星沖縄臨床研修センター長・徳田安春氏に「もう一つの選択肢」について話を聞いた。徳田氏は、沖縄県立中部病院で総合診療に携わり、ハーバード大学公衆衛生大学院で臨床疫学を修め、聖路加・ライフサイエンス研究所臨床疫学センター副センター長、筑波大学大学院医療医学系教授、地域医療機能推進機構本部研修センター長などを歴任している。  第一波の到来時から「感染源対策」としての大規模PCR検査と感染者の早期保護隔離、接触者の追跡による「ゼロ・コロナ」戦略を提唱し、日本政府の基本方針である「ウィズ・コロナ」戦略からの脱却を説いてきた。  徳田氏は、こう指摘する。  「日本は、ウィズ・コロナ戦略で、コロナとの共生、ある程度、市中流行を容認する立場なのですが、これを選んだ欧米、日本を含む多くの国が感染の抑制に失敗しています。この戦略では使えるツールは感染が拡大したら流行カーブの山を自粛要請などで叩いて下げる、いわゆる『ハンマー&ダンス』くらいです。  これは感染の抑制を個人の努力に帰着させる方法で、経済社会的損失はずるずると続き、かえってダメージが大きくなる。  このリスクは、昨春頃からわかっていたのですが、政府も専門家と称する人たちも、きちんと説明をせず、あたかもこれが唯一の戦略であるかのように唱え、続けてきた責任は大きいと思います」  徳田氏は、「ゼロ・コロナ」に目標を設定し直せ、と言う。  「世界で封じ込めに成功している国々、中国や台湾、東南アジア諸国、西太平洋地域のニュージーランド、オーストラリア、欧州のアイスランドなどの感染対策の基本は、感染源を封じるゼロ・コロナ戦略です。積極的に防疫目的の大規模検査を行って、感染者を早期保護隔離し、追跡を徹底しています。  日本は、クラスター対策で集団感染が起きると後ろ向きに調べて感染者を隔離していますが、根本的な予防対策になっていない。新型コロナウイルスが厄介なのは、発症前の人、無症状の感染者から感染、伝播することです。その人たちを見つけて保護するには大規模検査しかない。成功している国から学ぶべきで、失敗している国の情報に頼っていたらミスリードしてしまいます」確かにクラスター対策はもはや限界にきているように見える。感染経路不明の患者が激増しているのを見れば明らかだろう。ただ、大規模検査=早期保護隔離を行うには、PCR検査のキャパシティを劇的に増やさなくてはならない。第一波の頃に比べればPCR検査は増えたとはいえ、封じ込めに成功している国々に比べると日本の検査数は極めて少ない。徳田氏が続ける。  「昨春以降、PCR検査の大幅拡充が国際的コンセンサスになりましたが、日本はその努力を怠った。厚生労働省は、文部科学省に対して、大学の医療機関、研究機関における積極的な検査拡充の協力要請をしていない。一つの試験管に複数の検体を入れるプール方式を導入すれば短時間に多くの検体を分析できてコストも下がるので、世界中の国々が導入しているが、厚生労働省はまだ認めていない。  このような消極的な態度は、ウィズ・コロナというゴールセッティングに起因しているんです。やる気がないんですね。だから目標をゼロ・コロナに変えて大幅拡充に導く必要がある」  しかしながら、PCR抑制主義は一種のドグマのように厚労省や専門家の間に根づいている。転換できるのか。  「検査拡大の突破口は、迅速抗原検査です。これをPCR検査と組み合わせるのです。迅速抗原検査の利点はコストが安く、15~30分で結果が判明することです。しかしPCRに比べると感度が落ちる。ですから検査頻度を多くし、陽性者はPCR検査で確認をする。たびたび抗原検査を行い、順次、保護隔離を行う。  必要時にのみ、ホットスポットとなっている感染密度の高い地域に限定して『サーキットブレーカー方式』のロックダウン――日本では緊急事態宣言の発出――で外出自粛を要請するのです」  サーキットブレーカー方式によるロックダウンとは、どのような手法なのか。  「建物には許容量以上の電力が流れたらスイッチがオフになるブレーカーが付いていますね。あのように実効再生産数などの指標となる数値を超えたエリアだけ徹底介入する戦術です。日本では法的に都市封鎖はできませんから、ある地域に緊急事態宣言を出して不要不急の外出自粛を要請することになる。一都三県の緊急事態宣言の再発出だけでなく、他の道府県でも感染密度の高い地域に、細かく外出自粛の網をかぶせる。  大切なのは、そのあとなのです。外出自粛で感染密度を下げたときに大規模検査を行って保護隔離を徹底する。封じ込めに成功した国々は、そうやってゼロ・コロナに目標を定め、実践しています」  間もなく、首都圏では緊急事態宣言が再発出される。外出自粛のハンマーで流行曲線のピークが叩かれ、感染数は下がると期待されている。  勝負は、そのあとだ。下がった時点でさらに大規模検査を行い、ゼロ・コロナをめざして保護隔離を徹底し、感染源を断つ。そのための感染者の受け皿に必要なマンパワー、宿泊療養施設やコロナ専用病床の確保に財政資金をどっと投入する。  その政治的決断が求められている。どこかでコロナと訣別する方向へ根本策を転じなければ、憂鬱なハンマー&ダンスが続きそうだ。

この主張は、私の昨年初期からの主張と全く同じ。ただ当時この主張をする人は殆どいなかった。記憶にあるのは、山中伸弥氏のサイトに出ていた、獣医の田口氏ぐらいである。その頃まだ未知のウイルスだと言われていたコロナウイルスについて、獣医学者にとっては未知でも何でもないと、この人ほど簡潔にその特徴を延べていた人はいない。マスコミは全く取り上げなかった、この人の主張も遅すぎる。