北陸発 2020年4月4日 病院 ベッド不足 危機感 コロナ感染 半月で9倍 現場「診療のストレス大」

北陸中日新聞転載 安倍、これでも非常事態ではないか。

新型コロナウイルスの感染が北陸三県でも拡大している。感染者は三日時点で合わせて七十四人となった。半月前と比べて九・二倍。市中感染の疑いが否定できない人や濃厚接触者も増えている。医療現場の負担は増し、感染者を収容しきれないベッド不足が起きる恐れも出てきた。(辻渕智之)

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 政府の専門家会議は一日、都市部での感染者急増に「医療現場が機能不全に陥ることが予想される」との見解を示した。入院するベッドの確保、調整が綱渡りになりかねない懸念は北陸でも現実味を帯びている。

 福井では男性一人が亡くなり、残る感染者四十一人全員が入院中か入院手続き中。これに対し、感染症指定医療機関の専用ベッドは県内に二十床しかない。このため二十八床ある結核患者用ベッドを活用。さらに感染者の増加を想定し、感染症指定医療機関の一般病床のうち五十床を転用して確保できるめどをつけたという。

 石川、富山も陰圧管理などができる専用ベッドはそれぞれ二十床、二十二床だけ。両県とも県内の医療機関に要請し、感染者の隔離を保てるよう一般病床でも動線を分けるなどすれば受け入れ可能になるベッドを石川は約五百床、富山は八十床確保したと説明する。

 ただし三県とも、確保可能とするベッド数が現時点で空いているわけではない。福井県は「現在の入院患者の病室移動や転院が必要」なのが実情。県医師会も「ごく近い将来のベッド不足」に危機感を示す。石川県は「実際の空きベッド数はまだ把握していない」。

 厚生労働省は三日、軽症者や無症状の人を入院させず、都道府県が用意する宿泊施設や自宅で療養させるための準備を通知で求めた。だが三県とも宿泊先や態勢が整う見通しは立っていない。各県内の医療供給体制で対応可能な最大患者数の試算や広域連携の検討も具体化していない。

 北陸の医師や看護師らも、患者の診療で相当な緊張を既に強いられている。防護具は一人診療するごとに着脱し、重症肺炎に使う人工呼吸器や心肺装置の管理には人手が常時いる。治療薬がない中で患者ごとに違い、変化する病状に慎重な対応を迫られる。

 「PCR検査の検体を鼻やのどから採取する際、感染者の体液を浴びる可能性があり、防護服を着ていても怖いという声を聞く」と石川県健康福祉部の担当者。「外来患者を初診する市中の開業医を含めて医療現場は現状であっても大変。院内感染のリスクを抱え、大きな精神的ストレスを感じている」と漏らした。