例えば、ある在宅医は、唾液や痰上がりが増えると、栄養や水分などの処理能力が追い付かない(だから終末期が近い?)、などと言う。
何言ってんだ。それでも消化器内科の専門家か。
経腸栄養を入れれば当然唾液の分泌が多くなる。嚥下不全者を高ギャッジアップで経腸栄養をすれば、唾液は下降し、溜まって気道を塞ぎ窒息させるか、唾液誤嚥を起こし咳や痰を誘発する。また、不顕性誤嚥の危険もある
これを解決するには、低ギャッジアップだが、今度は逆流性誤嚥の危険がある。これを解決する本来の方法は栄養の半固形化だろうが、細い長い管では難しい。
一方、低あるいはゼロギャッジアップの効用は、完全側臥位と併用して、食塊や水分の貯留を起こし嚥下を遅延させ誤嚥を防ぐという。
しかし、私はむしろ体位ドレナージ的な効用が高いと思っている。唾液や痰、逆流物に至るまで、嚥下させず口から体外に排出させて誤嚥を防ぐわけだ。
ただし。うちの母のように、固く口を食いしばることがある(排出への心理的抵抗などがある)人には、逆効果の時もある。口内に貯留し限度を超えたり力尽きて誤嚥することがある。また、低ギャッジアップでの経管栄養は、逆流による誤嚥は高確率で、既に少なくとも二度、在宅でも発生させてしまった。咳などをきっかけとしていると思う。経管栄養中の放置は危険である。
体位ドレナージの効用を経験するのは、喉頭痙攣様症状が起きた時である。非常に勇気のいることであるが、この時は、ゼロギャッジアップまたはマイナスギャッジアップの完全側臥位にして体位ドレナージを促す。排出されれば、無理に飲みこもうとする必要がなくなり緊張が弛緩され痙攣はおさまる。
ただし、高ギャッジアップの安全性が高いというデータがあり、フラットな完全側臥位にはまだそれほどデータがそろっていないと、健康相談の看護師にきいたことがある。
一番の疑問は、高ギャッジアップの時、嚥下はどうなっているかである。経腸栄養中であるから唾液の分泌は必至であり、それを食道に飲みこまなければ、気道に誤嚥するか窒息である。まさか、唾液誤嚥してもいいというわけでもあるまい。
ただ、一番の高リスクは低ギャッジアップによる経管栄養物の逆流による誤嚥性肺炎である。それを起こさせないほどの低ギャッジアップのさじ加減が難しい。高ギャッジアップにすればするほど、褥瘡のリスクも高まるし。患者の体位による負担や唾液・痰の問題は大きくなると思う。
痰は、やはり気道から来るもので炎症(肺炎)の産物である。という記事を読んだ記憶がある。ということは、これが増えることは、高ギャッジアップによる唾液誤嚥を示していると思う。