#森永卓郎の本音・ワクチンは救世主になるか

ワクチンは新型コロナ収束の決め手になる。菅義偉総理をはじめ、多くの人がそう言っている。だから、だましだましでも、ワクチン接種の普及まで耐え抜けば、強い行動規制をかけなくても何とかなると期待する。しかし、それは本当に正しいことなのだろうか。

 私が気になっているのは、先進国で最もワクチン接種が進んでいる英国の状況だ。英国の感染者数は、1月8日の6万8053人をピークに急減し、4月10日には2584人と、ピーク時の26分の1に減少した。ところが、それ以降は2000人前後の横ばいがずっと続いているのだ。

 理由はいくつか考えられる。一つは、国民全員がワクチンを打つわけではないこと。もう一つは、変異株への有効性が確実ではないこと。さらに、ワクチンの効果の持続性に関しても、十分な検証がなされていない。

 実は、英国はワクチンの急速な接種とともに、ロックダウンと徹底的なPCR検査を併用して対策を進めてきた。どの対策がどれだけ効果を発揮したのかは明らかではないが、感染急減の原因はロックダウンやPCR検査だった可能性もあるのだ。

 私は、大規模PCR検査で陽性者を自宅待機にする方法を真剣に検討すべきだと思う。すでに日本航空全日空は国内線の予約者に対して、2000円の自己負担でPCR検査を行うサービスを始めている。航空会社ができるのだから、日本政府もできるはずだ。

 大きな費用もかからない。国民全員の検査をしても、2500億円だ。これまで政府が費やしてきた新型コロナ対策の費用が80兆円近いことを考えれば、誤差程度の話なのだ。それをやらない理由は、感染症ムラの人々が、自分たちの力の及ばないところでの収束を望まないからではないのか。(経済アナリスト)